レビュー : GL.inet Slate AX (GL-AXT1800) トラベルルータ

はじめに

世の中には一週間の半分近くを出張で家を空けるという出張族という部族がいます。
私もご多分に漏れず、その部族に数年属していたことがありますが、国内外問わず出張時にはその宿泊先で提供されているWifiを使うことになり、以下のようなフラストレーションを日々感じました。

  • 宿泊先の部屋には有線LANポートが1口提供されているだけ
  • 提供されている無線LANの電波が悪い
  • その宿のWifi接続情報を1台1台に入れるのが手間がかかる
  • 定期的にログインしなければいけない仕組みも最近増え、その都度1台1台再接続処理をやるのが手間がかかる
  • 自宅のコンテンツやリソースにアクセスする場合、iPhoneやiPad、Laptopで1台1台VPNをしてつなぐのがしんどい
  • 宿泊先のWifiがWEPやWPA1などの古い接続方式を使っていたり、接続後、ネットワーク全体が見えていてセキュリティ的に不安(こういうザルなネットワーク管理をしているところは得てしてセキュリティのリテラシーが低く、LAN上に外部から侵入された怪しいデバイスや攻撃をしてくる端末がある)

これらの問題を解決する方法としてトラベルルータの存在があります。一方でこのトラベルルータという機械は需要が少ないのかここ数年大きな進化をしておらず、接続規格も昔の802.11n(wifi4)や802.11ac(wifi5)を使用する古いものがほとんどです。そのようななか、トラベルルータで超小型のものや比較的高性能で多機能な製品を意欲的に作っている香港GL.inet社が新作、Slate-AXをリリースしました!ここ数年GL.inet社のトラベルルータを愛用している著者としてはすぐに試さない理由がありません。早速試していくことにしましょう。

ここだけは読んでほしいハイライト

■トラベルルータの利点

  • 出張先での端末管理が簡素化できる。(1台1台ホテルWifiに繋がなくて良い)
  • 自宅のWifiと同じ名前、キーにしておけばホテル到着後、認証ののちに自動接続でらくちん
  • セキュリティの向上(他のマシンがLAN側にはいってくることはない)
  • VPNなどの活用で自宅と接続し、自宅をVPNの先に延長接続し、自宅同様の環境を擬似的に作り出すことが可能

■本製品の特筆すべき点

  • とにかく速い!Wifi6の接続スピードはもちろん、5GHzのAP経由でのアクセスではスループットも400Mbpsを軽く超える。自宅のメインルータでも問題ないレベルの性能が掌の上に乗ることは驚異
  • WAN側を有線LANにした場合のスループットは上述の通りチョッパヤなのはもちろん、WAN側をWifiにして通信する場合でも5GHzでの通信は300Mbpsを超える

■その他、注意点

  • 初期設定でWifiの5GHzのAPを設定した後、iPhone以外の端末(ipad/android/windows)が一切つながらないという事象に遭遇。初期設定からやり直しても再現した。結果的には使用する5GHzのアクセスポイントの動作周波数をAutoではなく、明示的に指定することで解決。(おそらく今後バグフィクスが行われて治るとは思いますが。。)
  • 本体についているファンがいつまでたっても回らない。本体が熱くなりすぎて怖い!という方は、こちらのリンクを読んで見ると対処策が見つかります。(要詳細コンフィグへのアクセス、SSHでのログイン設定の追加、本体での設定変更作業)

わかる人向け

/etc/init.d/gl_fan stop
uci set glfan.@globals[0].temperature=’60’
uci set glfan.@globals[0].integration=’4′
uci set glfan.@globals[0].differential=’20’ uci commit glfan
/etc/init.d/gl_fan restart

https://forum.gl-inet.com/t/axt1800-running-hot-75c/23385/26

この製品は誰が使うとよいか?

  • 出張族にはマストなアイテム。特に海外出張のときにOpenvpnで自宅や日本のVPN拠点につなげれるのはとてもメリットが大きい。滞在先で日本のAmazonプライムビデオやNetflixを見るときには必須といえる。
  • 自宅でもコンパクトなルータが欲しいという人にはいいチョイス

製品説明/特徴

上述の通り、トラベルルータとしてとても性能が高いものになります。

最新のWifi6に対応しており、ルータのOSはオープンソースのOpenWRTに手を加えたものが導入されています。
トラベルルータの動作の仕組みとしてはホテルネットワークや公衆WIFIをWAN側のネットワークとし、WAN側のインタフェースをファイアウォールのような動作をし、LAN側を自分の箱庭として接続、LANのアドレスをNATで変換することででインターネット接続をすることが可能となります。

また、VPN(Virtual-Private-Network)を利用することで他のネットワークとこのルータを接続し、仮想的に同一ネットワークとすることができます。よくあるケースでいうと自宅にVPNして滞在先を自宅の延長上にすることですね。また海外から日本の動画サブスクサービスをみたいときに使用することも多いです。

以下、製品特徴となります。本家での英語の説明でよいかたはこちら。

【WiFi 6 ワイヤレスルーター】Slate AXは、デュアルバンド約1800 Mbps(2.4GHz 574Mbps、5GHz 1201 Mbps)のWi-Fi 6ネットワーク接続を強力に提供します。MU-MIMO、OFDMA、BSSカラーによりWi-Fiパフォーマンスを向上させ、最大120台のデバイスに同時接続することができます。

【高速で安全なブラウジング】IPv6対応、OpenVPNとWireGuardをプリインストール、30以上のVPNサービスプロバイダーに対応、OpenVPNは最大120MbpsWireGuardは最大550Mbpsの速度で動作します。Torサービスをプリインストール。Cloudflareの暗号化をサポートし、プライバシーを保護します。

【簡単なファイル共有】当社のNASはSAMBAとWebDavプロトコルをサポートしています。外付けUSBハードディスクをルーターに接続することで、プライベートネットワークを作成し、ドキュメントを保存・共有することができます。

【OpenWrt 21.02で動作】Slate AXは最新のOpenWrt 21.02 OS (Kernel version 4.4.60) で動作し、大量デバイス接続機能を備え、信号干渉が大幅に低減されています。好みに応じてルーターのカスタマイズやアプリケーションのインストールが可能です。

【機能】ルーターモード、ブリッジモード(APモード)、中継機モード、USBテザリング。【パッケージ内容】GL.iNet GL-AXT1800 ルーター(1年保証)、アダプター、ケーブル、取扱説明書。ファームウェア:https://dl.gl-inet.com/?model=axt1800。初期不良や故障が起こった場合、サポートセンターと連絡ください:support@gl-inet.com。

製品写真

製品操作画面

専用アプリ操作画面

最近はGL.inet自らルータのアプリを公開しています。(iOSはこちら。Androidはこちら)

ブラウザ上で設定できることよりは少し機能が劣っているように感じましたが、直感的で触りやすいインタフェースだと思いました。

ベンチマーク(結果は随時追加しています)

冒頭から速い速いと言っている以上、しっかりと結果を残しておかなければ、ということでベンチマークをとり性能を確認してみました。

ベンチマーク取得時の構成

パターン1: WAN側有線接続

WAN(ホテルなどの滞在先NW)—-有線接続—-Slate AX-LAN(本機器)—-ベンチマーク取得機器(iPhone 13 Pro Max)

speedtest.net

外出先サンプル:

日本で一番速いホテルと信じてやまないヒルトン大阪で取得したものです。こちらは普段から200~400Mbpsのスピードがどの部屋でも出る恐ろしい性能を持っています。
(注:ダイアモンドメンバーや有料で高速プランを選択した場合ですのでご注意!)

サンプル: 自宅のFTTHの線で接続した場合

WAN(自宅FTTH、AUひかりタイプV,5Gbps)–Ubiquiti Dream Machine Pro–LAN–有線接続—-Slate AX-LAN(本機器)—-ベンチマーク取得機器(iPhone 13 Pro Max)

wifiman

Ubiquiti社が提供しているWIFImanアプリからもベンチマークができ、そちらの結果も併せて取得しました。こちらは下り600Mbps/上り530Mbps程度です。

openspeedtest

自宅LANの中に立てたOpenSpeedTestのサーバの結果。WANを経由していない分もっと速い結果が出ると思ったが結果はSpeedtest.netの2回めの結果に似たものとなった

fast.com

Netflix社が公開しているFast.comのベンチマーク結果も記載します。個人的にはこのベンチマークは条件がゆるゆるであまり参考にはならない気もしているのですが・・・念の為ですw

パターン2 : WAN側無線接続(5GHz AP経由)

■構成
WAN(自宅FTTH、AUひかりタイプV,5Gbps)–Ubiquiti Dream Machine Pro–LAN–Wifi AP–無線接続(5GHzのAP接続)—-Slate AX-LAN(本機器)—-ベンチマーク取得機器(iPhone 13 Pro Max)
この接続はWAN側の接続を無線LAN経由で接続することとなります。SlateAXは2×2のMIMOですが、みたところ、接続したWAN側が2.4GHz/5GHzの場合に関わらず、接続した周波数帯の1つのバンドをWAN側に割り当て、もう1つをLAN側に割り当てる、という動作をしているように見受けられました。
結果としてはスループットはWAN側有線接続の結果に対してほぼ半分といった形になりました。

speedtest.net

wifiman

openspeedtest

fast.com

パターン3 : WAN側無線接続(2.4GHz AP経由)

ーー執筆中ーー

製品を使用しての所感、まとめ

ーー執筆中ーー

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  1. オリックス

    GL-AXT1800 の記事、読みました。
    当方PCには強くないのですが、本体があまりにも熱を持つので、ファン対策をやりたいと思っております。
    一つお聞きしたいのですが、SSHへのログインは、どこから入ればよろしいのでしょうか?
    ファンの設定をしたいのですが、肝心なSSHへの入り方がわかりません。

    • ばやし(横浜ガジェット研究所 所長)

      オリックスさん、こんにちは。

      GL-AXT1800へのSSHのログインは、お使いのPCをAXTのWifiにつないだ後に、そのPCからTeraterm SSHやPuttyなどのSSHログインを行うためのソフトウェア経由で行います。
      SSHログインの際にログインしたいホストへのIPアドレス、ユーザ名、パスワードを要求されます。

      ・IPアドレスはAXT1800にWifi接続している際には、デフォルトゲートウェイがAXT1800になります。特に設定を細かくいじっていない場合はデフォルトの設定、
      つまりAXT1800のデフォルトのアドレス192.168.8.1に対してSSH接続を行えば設定が可能になります。
      ・ユーザ名、パスワードもAXT1800にブラウザでログインしているユーザでログインしてください。

      参考までにGL.inetのドキュメントのサイトリンクを貼っておきますね。(英語のみなのでDeeplやGoogle翻訳などで訳すと読みやすくなるとおもいます)
      https://docs.gl-inet.com/en/3/tutorials/ssh/#ssh-to-the-router-for-linuxmac-user

  2. オリックス

    ご丁寧なアドバイス、本当にありがとうございます。
    明日、早速やってみます!

  3. オリックス

    無事に入れました!
    ファン設定を行いたいのですが、ここからどうすればよろしいでしょうか?

  4. オリックス

    一応できましたが、実際にファンが60℃で動いているのかの確認はどうづればよろしいでしょうか?

  5. オリックス

    お教えいただきましたやり方で何とか入力できました。
    変更したファンの状態はどうすれば確認できますでしょうか?

    • ばやし(横浜ガジェット研究所 所長)

      オリックスさん、

      無事に設定できたみたいでよかったです!
      あいにく出先で実機が手元にないので未確認情報にはなりますが、おそらくこれで確認することが可能かなと。(SSHでAXT1800にログイン後、確認してください)

      https://forum.gl-inet.com/t/axt1800-running-hot-75c/23385/21

      こちらに書いてあるものですが、

      root@GL-AXT1800:~# gl_fan -help
      gl_fan: unrecognized option: h
      Usage: gl_fan [option]
      -t temperature # expected CPU temperature, default is 90
      -p proportion # Proportion parameter in PID algorithm, default is 10
      -i integration # integration parameter in PID algorithm, default is 2
      -d differential # differential parameter in PID algorithm, default is 10
      -s # print fan speed
      -v # verbose

      ここでいう gl_fan コマンドに -tのオプションと -sオプションを使えば確認できると思います。

      (以下のコマンドはプロンプトの # 以降の文字列を入力してください)

      ■AXT1800の温度確認
      root@GL-AXT1800:~# gl_fan -t

      ■AXT1800のファンの回転速度確認(ファンが動いていればこのコマンドで表示される数字が変化するはずです)
      root@GL-AXT1800:~# gl_fan -s

  6. オリックス

    ありがとうございます。
    無事、ファンが回っていることが確認できました。

    おかげさまで本体が熱くなくなりました!!

    これで旅先や出張先で大いに役立ってくれます。

    ご多忙にもかかわらず、初心者の私にお付き合いいただきありがとうございました。

    このるーたーに関して、さらにこうした方がいいとか、おすすめがございましたら、ご教示していただけると幸いです。

  7. オリックス

    今、VPNで悩んでいます。

    また無知なご質問になりますが、

    open VPNがいいのか、WireGuard がいいのかで試行錯誤しております。

    ちなみに、両社とも、無料版ってありますか?

    今現状、PC・スマホ・タブレットの全てに、ADguard を入れて使用しております。

  8. ばやし(横浜ガジェット研究所 所長)

    オリックスさん、ごめんなさい!すっかりコメント見落としていました。。申し訳ないです。

    OpenVPNとWireguard、両方使ったことある身としては、OpenVPNのほうが設定のしやすさでは定評がありますが、一方Wireguardほど速度が出ないかなといった感じです。ただ速度がでないといっても数十Mbpsはフツーにでるレベルですので実のところはあまり気にならないです。OpenVPNは無料のコミュニティ版があり、Wireguardは基本的にFreeだったと思います。